編集長コラム 
vol.11: 中島みゆき「地上の星」  2003年1月15日(水)

 先日、「ブロードキャスター」というTV番組で、NHK紅白歌合戦で瞬間最高視聴率をとった中島みゆきさんの『地上の星』に関する特集をしていました。ほとんどの方がご存知だと思いますが、NHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」の主題歌でもあるこの曲は、発売以来オリコンチャート100位以内の連続記録を現在更新中で、今年に入ってなんとベスト10に食い込んだそうです。
 
 プロジェクトXの中でも大変大きな反響をよんだのが、「黒部ダムの建設プロジェクト」。その紅白では、中島さんは黒部ダムのトンネルから中継で歌ったのでした。
 驚いたことに、黒部ダムの保守メンテナンスに携わっている方々は毎朝の体操・朝礼のあとに、みんなでこの『地上の星』を聞いて、気持ちを奮い立たせてから仕事を始めるそうなのです。その番組では直立・腕組みをしながら、目をつぶり歌に耳を傾ける現場の人たちの映像が流されました。

 中島みゆきさんは、ある雑誌のインタビューに対して、「大きなプロジェクトの完成には、実際に現場でボルトを締めたり、重いものを運んだ人々の姿がある。華やかな報道の裏で、そんな注目されない人たちが勇気をもてるような歌を作りたかったのです」そんなコメントを残したそうです。あたりまえかも知れませんが、中島さんは自分のために歌を作ったのではないのです。
 
 音楽の業界でも当然マーケティングは重要なのでしょう。しかし『亜麻色の髪の乙女』がリバイバルでヒットすると、同じような考えのリバイバルソングがいっせいに発売されたりしています。そんなマーケティングはいったい誰のためにするのか?それは曲が売れるため、発売者側の思いです。

 中島さんが中島さんである所以は、マーケティングという概念の世界とはまったく異質な、まさに「歌を届けたい人への“想い”」が強いからではないかと思います。そこに彼女の天性の能力と、多くの同じ想いをもった人々の協力が重なっていきます。だからこそ、歌を届けられた人の心をここまでも打つのです。

 多くのミュージシャンが、ワンヒットや2〜3年はヒットチャートの常連になって、その後そのほとんどが消えて行きます。音楽の世界でも頑張り続けられる人、人の心を打つ歌を作り続けられる人は、やはり自分のためではなく、「自分の歌を待ってくれている人の存在」を大切にしているのだ、そんなことを考えさせられた番組でした。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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