編集長コラム 
vol.13: 身近な人って大切なんだ  2003年2月4日(火)

 久しぶりに、取材で出会った31歳の方のエピソードです。
 
 メルマガ&コミュニティサイト「京都の30歳!」に掲載させていただいた、株式会社フェイムの営業リーダー松本尚也さん。陸上の名手として活動してきた彼は、高校時代、突然に足を痛め、国体出場という夢を絶たれました。打ち込めるものを失ってから彼は、若者が集まる京都の繁華街・木屋町に入りびたる毎日。芸能界を目指し、東京の大手プロダクションのモデルオーディションにも挑戦するなど、自分でも言うとおり"目立ちたがり屋"です。

 新卒として京都で地域情報誌を発行する今の会社に入社後は、紆余曲折はありながらも、上司の愛情や不断の努力で、一人のビジネスマンとして自信を持てるまでに至りました。しかし会社では後輩の指導に悩む毎日。小学校の卒業文集に書いていた、"有名になりたい"想いを断ち切れず、悶々とした日を続けていたと、彼は言います。

 そんななかで、これまで可愛がってくれた彼のお祖父さんがお亡くなりになられました。自宅から離れた所に住んでいたお祖父さんは、年に一、二度、孫の松本さんの顔を合わせるたびに、「もっと遊びに来ておくれ」と、そう彼におっしゃっていたそうです。初めての身近な人の死に、松本さんはショックを受けました。

 「どうすればもっと多くの人に自分を知ってもらえるのか。そればかりを考えて、自分を支えてくれる人を、自分はあまり考えてないんじゃないか・・・」。
 この出来事をきっかけに、彼は周囲の人への接し方を変えました。それは周りのメンバーの意欲をも変えました。彼らの会社の定着率もあがり、松本さんはより大きな仕事に取り組めるようにもなったそうです。

 30歳というのは、それぞれ取り巻く環境にもよりますが、実はまだ “自分が何のために働くのか?”という思いを、実感しにくい年齢です。一部の調査によれば、30歳の既婚率は50%を割っているそうです。30歳だと、まだ自分の家庭に対する「役割・責任」は少なく、自分自身の親も60歳前後、まだ元気な世代です。しかし、35歳から40歳になると、結婚して愛しいわが子ができたり、元気だった両親も高齢になり体力が衰えていく現実のなかで、自分の明確で重要な「役割・責任」が発生するのです。

 松本さんはお祖父さんの死によって、「目立ちたい」という気持ちから、「自分を支えてくれる人のために、できる限りのことをしたい」という、「気づき」と「頑張る力」を得られました。その力が彼に新しいリーダーシップの原型をもたらしました。

 身内というものは、やっかいな存在です。特に親はいろいろと口を出してくるなど、とかく煙たい存在です。「自分のために言ってくれているんだ」と、頭ではわかっていながら、日頃はどうしても邪険に対応してしまいがちです。しかし、親も次第に老いていくのです。

 親の身体が弱ってきた現実に、自分はどう対応するのか。最後の親孝行をするために、今からどんな「働き方」を確立させて行くのか。30歳は、そんなことを考えはじめる年齢でもあります。そしてそれが、新たな「頑張る力」にもなっていくのです。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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