編集長コラム 
vol.23: 「強烈な想い」が人を動かす  2003年6月18日(水)

 京都に株式会社太鼓センターという注目のベンチャー企業があります。社長のひがしむねのりさんは54歳。学生時代から和太鼓の持つ心とからだに響く音感や、演奏を通じて人と人が心を通じ合わせられる魅力にとりつかれました。教室の運営、関連用品の販売、演奏会、数々の舞台のプロデュースや教本の執筆などは、国内の第一人者といっても過言ではありません。そのひがし社長が中核となって、今年の11月から3年半というロングランで、太鼓新歌舞伎『阿国・わらう』という一大イベントを実施することになりました。

 先週、京都のベンチャーキャピタル会社が主催する異業種交流会に参加したときに、ひがし社長からこのイベントに関する5分間の発表があった時のことです。

 「出雲の阿国が京都で歌舞伎踊りを創始して今年がちょうど400年めになります。400年前とは、徳川家康がようやく戦国時代に終止符を打ったとき。武家社会の権力争いの戦に巻き込まれ、荒廃した京都の町や民衆の心。阿国は派手な衣装で男装までして躍動的な踊りを見せ、民衆の心を解き放ったのです」

 「私は、この『阿国・わらう』のイベントで、先の見えない不況に希望を失ってしまった京都や日本の人々に、明日へのエネルギーを持ち帰ってもらいたいのです」

 「たがだか4億円弱の売上げの当社が、このイベントに1億円を投じます。多くの方々から、その無謀さを非難されたりもしています。でも、私はやりたいんです。阿国や和太鼓を通じて、ひとりでも多くの人に元気になってもらいたいのです」

 たった5分です。100人近い出席者の前で理路整然とはほど遠く、54歳のひがし社長はただ大きな声で顔を真っ赤にして「想い」を語りました。

 10分後に始まった交流会では、ひがし社長のもとに出席者が殺到しました。特に30歳前後の若いビジネスマンが中心でした。「感動しました」「私にできることで少しでも協力させてください」「両親や祖父母にもこのイベントのこと宣伝します」などなど…。約11時間半の交流会中、ひがし社長のまわりには、人垣がなくなることはありませんでした。交流会の後も、メールや電話などで応援のメッセージや協力の打診などが続いていると聞きます。

 このひがし社長を取り囲んだ若いビジネスマンの中で、それ以前に和太鼓や阿国に興味を持っていた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。魅了的な商品やサービスや、スキルやノウハウ・お金を持った人にも人は集まります。しかしそれを越えて、「何かに役立とう」という強烈な「想い」にも人は動かされるのです。

 「想い」に年齢は関係ない。信じる心の強さとそこから生まれる身を挺した行動力こそが、周囲の人を動かしていくのだ、ということを今回あらためて再認識しました。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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