編集長コラム 
vol.32: 35歳への道(3) 2003年9月09日(火)

 先週に引き続き、組織で高いポジションにつくという視点を考えてみます。かつてほどの憧れはなくなったとは言え、組織で働いていて「課長」や「部長」というポジションにつくことに大きな魅力を感じる人は多いでしょう。仕事上でも権限を持ち一目置かれますし、仕事以外の付き合いでも肩身の狭い想いをしなくて済むことも多い。
 しかし最近では中間管理職のポジションは大幅に減っています。企業側は、組織を束ねるという業務に必要な人間の数を必要最低限に抑えようとしているからです。そして複線型と言われる人事体系が主流になってきています。これは、仕事の能力が一定の水準に達した人に、今後組織を統括していく業務に進んでもらうか、そうでなくその仕事のスキルをさらに向上させていってもらうか、などという複数のコースを用意している人事制度です。後者の場合、自分の部下というものはいないのが基本です。

 このひとつの仕事の能力を高めていくという働き方は、前回少し書きました組織を任されるコースと比べて、「人」にまつわるストレスはかなり少なくなります。いろんな協力者の力を借りながらも基本的には、自ら考え、自ら動いてみて結果を実証し、結果を出していく。時間的な自由度もかなり高い。あまり他人のことは気にせず、自分に任されたことに没頭し、コツコツと結果を積み上げていくほうが自分の性に合っている人には良い制度です。また時間の使い方をある程度自分で調整しやすいので、プライベートなどの自分の時間を大切にしたい人にも有効な制度です。ノーベル賞をとった島津製作所の田中さんはこの働き方で仕事が認められた最高のケースでしょう。
 その代わり、自分が積み上げてきたことが会社や社会のニーズからズレて行くリスクがあったり、孤独感を感じることも多い。また「管理」のコースを進んだ若い人の指示・命令系統の中で働く可能性もあり、精神的なツラサもあります。

 最近はメディアの発達によって情報が氾濫していて、人の価値観も多様化し、自分自身を見失ってしまいがちです。そこから、あまり多くの人間関係の中ではなく、心地よい一定の人間関係だけを保って自分の世界の中だけで生きて行きたいと言う人が増えているように思います。
 もしそうなら早くそんな働き方に変えて高いポジションを目指してみればいいと思います。本当にそういう働き方を望んでいたのかを体験すればいいのです。ポイントは、この働き方の場合、仕事に関連した自分を直接的に取り巻く「人」が少なくなるので、「自分は誰のために、何を大切に働くのか?」ということを仕事上では実感しにくい点です。人とのコミュニケーションが減ると、「気づき」を得る機会も減ってしまいます。
 そういう働き方が本当に自分の性に合っているのか、もしかしたら、いまの職場の人間関係が合わなかっただけかも知れません。30歳前後の今だからこそ自分で意識的な選択をして、まずは経験してみることが大切だと思います。




 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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