編集長コラム 
vol.36: 1年の空白期間なんて怖くない 2003年11月18日(火)

 30歳前後の1年くらいは、あせって失敗してもたいしたことはない。むしろ失敗を恐れて身動きがとれなくなってしまうよりはマシなのかもしれない。
 8月5日にサイト上に物語をアップさせた、30歳の税理士の今村仁さんからはそんなことを学びました。

 小さな町工場を経営していた父を持つ今村さん。中学のときのあるキッカケから「税理士になって中小企業を救いたい」と思うようになり、勉強一辺倒の暗い高校時代を過ごされます。大学では熱気球クラブやアルバイトに精を出すと同時に専門学校に通いはじめ、税理士事務所に就職しても夜遅くまで受験勉強に没頭する日々だったそうです。

 試験にも合格して、将来の独立を目指して頑張っていた頃、ITバブルに踊る東京のベンチャー経営者の集いに足を踏み入れて「あせり」が芽生えます。華やかにマスコミなどに取り上げられる同世代と事務所の雇われ税理士のままである自分。ご本人いわくの「ミーハー心」にも火がつき、東京の超人気AV機器メーカーに、京都から転職をされます。
 すでに子どもを身ごもっていた奥さんを「5年は頑張るから」と強引に説得して引越しのダンドリをとり、意気揚々と出社した転職先で与えられた仕事は伝票チェックとコンピュータ入力の単純な仕事。たった3日で「失敗した!」と思われたそうです。「ここでは自分の将来に結びつくような仕事はほとんど学べない…」と。京都から遅れてやってきた奥さんには、7ヶ月間もその気持ちは打ち明けられなかったそうです。
 そしてふたたび京都に戻り、気持ちを入れ替えて地道に独立への準備を始められます。「1年間妻に迷惑をかけたぶん、必ず独立をして成功する!」。そんな思いで走り回り、ついにこの11月、大阪・南森町の地に念願の事務所を開かれました。

 
なぜか30歳に近くなると、何かを失うことが怖くて新しいことに挑戦する勇気が減ってくるようです。しかしよくよく自分の過去を振り返ると、30年も生きてくれば1〜2年の空白期間なんて一杯ある。
 「もう30歳だから」と思ってしまえばそれで終わり。「まだまだ30歳」。いよいよこれからがスタートなんだ。そう思って欲しい。決して無謀な転身を図れというわけではなく、日々の業務に真剣に前向きに取り組んでいれば、どんなことが起きてもいくらでもやり直せる。そんなスタンスが大切なことを教えてくれる物語でした。


 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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