編集長コラム 
vol.37: 本当の自分に気づいてますか? 2003年12月2日(火)

 自分のことは自分がいちばん知っている、と言うことがあれば、自分のことがいちばんわかりにくい、と言われることもあります。8月19日にサイト上に掲載した、派遣社員として働きながら朗読家としても活躍する佐野まき子さん(30歳)の取材では、そんなことを考えさせられました。

 佐野さんは、大学時代に出会った演劇の世界に魅せられ、就職後もその活動を続けられます。小さな会社で正社員の事務員として働いた後に、アルバイト生活を経て派遣社員として働くうちに、仕事と演劇を両立できる可能性に気づきます。しかし仕事との両立で本格的な演劇活動を続けていけなくなった仲間などを見ているうちに、やはり何かひとつに打ち込んだほうが・・・という思いで、働くこと自体を辞めてしまいました。

 ところが、いざ演劇だけに没頭しようとすると、いったい何から始めればいいのか、どう今後のことを考えていけばいいのかすら、わからなくなってしまう。限られた人との限られた会話の中で、時間だけが有り余る。自分の部屋でひとりビデオ鑑賞する日々が続いたそうです。

 ふたたび派遣社員として働き始め、ほかのさまざまな経歴をもった派遣社員やいろいろな所属企業の方々と共同作業をしていると、演劇・朗読活動をどう進めていけばいいのか、ということに気づきが生まれてきます。さまざまな人との多種多様な交流があってこそ、打ち込みたいことにも集中できる、そんな自分のスタイルをようやく発見できたのだそうです。

 佐野さんの素晴らしさは、20代のうちに1〜2年くらいのスパンで、思い切り良くいろんな働き方を試してみられたことではないでしょうか。人はいちど居場所なり、心を落ち着ける状態を手にいれると、それを失いたくないのでなかなか新しい半歩や一歩を踏み出そうとはしません。でも次々と変化していく今の世の中で本当に自分らしい生き方・働き方を見つけていくためには、いろんな人との出会いや交流を通じて、もっと大きな社会の中での自分を早く見つけることが大切なのではないでしょうか。

 前回も書きましたが1〜2年の失敗なんて、なんてことはないのが30歳前後の方々の特権です。自分の内面は自分でしか知りえないと思います。しかしそれは自分が知っている世界の中だけでの自分なのかも知れません。自分が知らなかった世界との接点を開いていくと、新しい自分に気づけることも多いでしょう。こう書いている私も行き詰ってしまっているときは間違いなく視野が小さくなってしまっているときだな、ということを痛感させられた取材でした。


 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
詳しい経歴はこちら
編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
トップページに戻る
(c) 2003 WOOCA. All rights reserved.