編集長コラム 
vol.39: 自分らしさや大切なことを守り抜く勇気 2003年12月16日(火)

 9/2にサイトに掲載した居酒屋チェーン・ももじろうグループの北村充さん(29歳)は、降格覚悟で会社のルールを破ってまで、自分らしさや会社が大切にすることを守ろうとした方でした。

 北村さんは、病弱だった父親に代わって、看護婦をしていた母親の強い影響を受けて育ちました。患者さんの娘が非行に走りそうになると、自分の子どものように叱りつけ、忙しい仕事のなかで暇を見つけては福祉施設にボランティア活動をする母親。
 調理の専門学校に通う中で、小さな居酒屋を営む社長に出会い、お客さんを楽しませるための徹底した姿勢、人手不足に悩む鉄工所の社長や農家のお客さんの仕事の手伝いまでして固定客を作っていく姿勢に憧れて、その店で働く決意をします。
 それから8年で会社は14店まで店舗網を拡大。組織が大きくなり従業員も増えて行くと、少しずつ創業時から貫いてきたお客さんに楽しんでもらう姿勢が形式的になりはじめていきます。お客さんから席に座ってお酒をふるまわれることは監督者である店長がやってはいけないことになってしまいます。
 しかし28歳のとき、店長だった北村さんは、この会社の創業から大切にしてきたことを守りたい気持ちや、母親や社長から学んだ自分が自分らしくお客さんに喜んでもらえる方法はこれしかない、と「店長降格」を覚悟してお客さんの席に座ったのだそうです。
 北村さんの肩書きは「社長室長」に変わりました。

 人は一度手に入れたものを失うことにとてつもない恐怖感を覚えます。一度手にした生活水準や会社内でのポジション、対外的な肩書き…。妻子など自分が養っていかなければならない人が増えてくると、なお一層保守的な気持ちが膨らんできます。
 しかし北村さんは、自分を育ててくれた社長やその社長が守り続けたいと思っていること、その中で自分ができることを、身を挺して、とても不器用に、範を示したのです。そしてそれは母親を見て育った自分らしさを守るための行動でした。それさえ守れれば肩書きや収入などは後回し、少々の生活の苦労などいくらでも耐えられる、という想いだったのではないでしょうか? そんな北村さんの目はとてもキラキラしていました。

 何かを得ようとするときには、何かを失う覚悟をしなければなりません。目先のお金や小さな快楽、優越感、安心感を得るために、自分のプライドまでを捨ててしまいがちな今の社会のなかで、とてもすがすがしい生き方を見せてもらった取材でした。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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