編集長コラム 
vol.42: 「好きなこと」の一面だけにとらわれない 2004年1月20日(火)

 企業勤めから一転、25歳になって専門学校で学びなおして陶芸職人の道を選んだはやたようこさん(33歳・2003年9月30日掲載)の物語からは、「好きなこと」の形にとらわれすぎてはいけないことを学ばされます。

 
はやたさんは香川県の自然豊かな町で幼少期をのんびり過ごし、中学で大阪市内に移るとなかなかその雰囲気に馴染めず少し自分の殻にこもってしまうようになります。大学のサークルで「地方文化」「方言」に興味を持って京都の学術出版の中小企業に就職しますが、社内の仕事の進め方に我慢ができずに3年半で退職。

 「ものづくり」の仕事がしたくて、以前から少し興味をもっていた陶芸の道に進もうと、学費をアルバイトで捻出しながら2年間の専門学校生活へ。就職した会社は月給13万円の待遇ながらものづくりに携われている喜びから、目の前の作品作りに夢中になります。
 10人にも満たない職場で黙々と土に向かう3年間。同世代の同僚の退職や、結婚を意識した男性との失恋が重なり、あっという間に孤独に陥ってしまい完全に自分を見失ってしまいました。

 
恩師との再会やさまざまなものづくり人たちが集まる交流会に参加して気づいたのは、はやたさんが陶芸の仕事が楽しいのは、「自分がつくりあげた作品のできばえ」にではなく、「自分の作品をキッカケにして京都の文化や歴史を語り合える」ことなのだということ。限られた人とだけのコミュニケーションではそんなことに気づけなくなっていたのです。

 
「好きなこと」を仕事にしたいという思いは決して悪い話ではありません。なぜならやはり「好きなこと」には最も力が入りますし、苦しさも感じずに夢中になって努力ができます。しかしその「好きなこと」の一面にとらわれすぎないことはとても大切だと思います。

 「好きなこと」に携わる中のいったいどんなときに楽しさや嬉しさを感じるのか? たとえばものづくりであれば、「造るものを考えているときがいちばん楽しい」人もいれば、「できあがりよりも造っている途中の小さな手ごたえがたまらない」人、「できあがったものが高く売れたときの誇らしさが快感」という人もいるでしょう。たぶん同じものづくりであってもそれは数十種類の楽しさ、嬉しさがあるのです。

 
もしどうしてもひとつの世界で生きて行きたいと思っているものがあれば、ぜひ「なぜその世界が好きなのか?」「その世界に携わっていくどんな瞬間にすべての苦労が吹き飛ぶのか?」というふうに多面的に「好きな理由」を分析することをお薦めします。
そしてそれはできればいろいろな人との交流を通じて考えたほうがいいと思います。好きなことに対する思いが強ければ強いほど視野が狭くなってしまって、意外と自分のことが見えなくなってしまうケースが多いですから。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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