編集長コラム 
vol.47: 真剣に取り組むからこそ気づきも大きい 2004年3月2日(火)

 自分の役割や責任に対して真剣に取り組めば取り組むほど、まわりや自分自身のことが見えなくなってしまうことが多くあります。しかし真剣だったからこそ失敗をすると痛みも大きい代わりに、そこから得られることも大きい。そんな、私自身も同じような体験を何度もして実感できたことを、株式会社イノブンの井上智絵さん(32歳)の取材(http://www.kyoto30.com/30workway/30inoue.html)を通じて思い出しました。

 
井上さんは小学校の時代から学級委員や生徒会活動に積極的に参加する「メガネにおさげ髪」のまじめすぎる優等生」だったそうです。地域一番の進学校に進んでも、勉強に励んで深夜の討論番組を見る・・・。京都の有名大学に進学してディスカッションサークルの数人の仲間との交流を楽しみ、手ごたえを感じられる仕事を求めて京都の雑貨ショップチェーンのイノブンに就職します。

 大好きな雑貨に囲まれ、気心の知れた何人かの同僚と、仕事とアフターファイブを楽しみますが、26歳にリーダー的な動きを求められると、かつてのまじめで責任感の強い性格が井上さんを苦しめます。小売店の常で多くのアルバイトを指導する社員という立場。店長から「何のための社員だ?」と突き放され、アルバイトから「社員なんだからしっかりしてよ」という視線が寄せられる。近くに相談できる同僚もいない中で歯を食いしばって頑張りました。「私は社員なのだからしっかりしなければ…」と。

 29歳になって店長としての動きを求められるようになると、ますますその役割をこなすために休日をつぶして競合店視察などまでこなす。アルバイトにはさらに厳しい姿勢で一方的な業務指示を続けます。そしてアルバイトからの「井上さんとは働きたくない!」などという不満が続出、ひとり自宅の部屋の中で「何が悪かったのだろう?」と涙ながらに悩み続けたそうです。

 井上さんは幼いころからごく一部の限られた友人だけに心を開いてこられたと言われます。商品陳列や店作りは店長や社員が考えるもの。自分がアルバイトをしていたときはお金こそが目的で、職場で友人を作ろうともしなかった。そんな思い込みがアルバイトとの完全な壁を作ってしまっていたのです。
 「しっかりとしなければ」という気持ちが強くなればなるほど、小数の友人に頼ってしまって目の前のアルバイトの人たちの意見を聞くことができなかったのだそうです。彼女達の「働く時間を少しでも有意義に過ごしたい、頑張る意味を感じたい」という気持ちに気づけなかったのです。今は多くの職場の仲間と心を通わせながら一緒になって店作りに励まれていらっしゃいます。

 とても大きな痛みを味わって得た大きな気づき。しかしこれは役割や責任に真剣に取り組み続けたからこそめぐり合えたこと。批判を受け止めようとせず相手のせいにしたり、 そこから逃げ出してしまっていては大切なことに気づけなかったのです。やるせない何かを憂う前に、とにかく真剣に打ち込み続けて見ること、そこから何かが見えてくるのかもしれません。


 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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