編集長コラム 
vol.48: 決して自分をあきらめない 2004年3月16日(火)

 30歳になるまでに手に入れたものをいったん捨てて、「また一からやり直そう」とはなかなか思えないものです。しかし自分の望む生き方・働き方を決してあきらめない限り、30歳という年齢はいくらでもやり直しがきく年齢なのだと実感できたのが、株式会社ナベルの高石康弘さん(32歳)の物語でした。http://www.kyoto30.com/30workway/30takaishi.html

 
小学校の卒業文集に「設計技師になりたい」と書いた高石さんは、幼少期から自分が選んだことをに区切りがつくまでは決して投げ出さない方でした。小学校のときからのスクール通いでスキルが高い同級生に囲まれて力の差を感じながらも中学の3年間をサッカー部での練習に明け暮れ、高校入学から卒業まで新聞配達のアルバイトを勤め上げます。
 工業系大学の受験に2年失敗しても最後の1年の猛勉強で雪辱を果たし、スケールの大きなものづくりの仕事につく夢を実現するためにあるプラント系の企業に入社します。

 2年間、現場での事故で休職を余儀なくされたり、社員の成長意欲を顧みず、理不尽で封建的な組織運営に疑問を感じますが懸命に自分の仕事に没頭しました。3年目になると業績が急速に悪化し、ボーナスや昇給がなくなって先輩や同僚が次々と退社していっても、かすかな希望を見つけ出して会社にとどまります。

 4年後ついに踏ん切りをつけて斡旋会社から紹介されたナベルは、「よるこばれることの、よろこび」を社是に技術者の気持ちを最も重視する会社。社長から「丁稚から始める覚悟はありますか?」と問われても転職を決断しました。29歳になっていました。
 新しい会社の同僚たちの技術者としての知識・経験・判断レベル・姿勢の差に愕然とされたそうです。周囲の目が「こんなことも知らないの?」と言っているように思えてしまうほど自信を失くしますが、「基礎から学びなおそう」という決意は揺らぎません。
 コツコツと独学を重ねて、1年数ヵ月後には社長直轄の商品開発プロジェクトを成功させて顧客からの喜びの声を耳にして、幼いころからの夢に近づけた喜びを噛みしめられるに至ったそうです。

 確かに30歳になって一からやり直すためには、先にその道に進んだ人との経験や実力の差を痛感せずにはいられないでしょう。ときには5歳も6歳も年下の人に頭を下げて教えてもらったりしなければならないこともあるでしょう。しかしそれはその限られた仕事のその時点の差だけであって、決して人間の差ではないし、自分をあきらめてしまう必要はないのです。そんなことを高石さんは社会に出るまでに体感してこられたのでしょう。そしてあせらないその姿勢が少しずつ夢への実現を可能にしていくのだと思います。


 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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