編集長コラム 
vol.51: 「後ろ向き」でいいじゃないか! 2004年4月27日(火)

 「前向きに考えれば道は開ける!」「ポジティブシンキングが大切だ!」…。そんな言葉がビジネスシーンや日常生活、書籍などで当たり前のように溢れています。私も決して異論はないのですが、こんな考え方が人を苦しい気持ちに追い込んでしまうことがあること、「後ろ向きな気持ち」になる自分も認めてあげることの大切さを痛感したのが、「エリッツ」株式会社長栄ホームの東寛昭さん(30歳)の物語でした。http://www.kyoto30.com/30azuma_f.html

 東さんは新しい資格取得やビジネスに次々と挑戦する父、「できる」母のもとで育って、自主的に興味あることにコツコツと集中力高く没頭していくチカラをつけていきます。難関大学にストレートで合格して19歳で宅建免許まで取得。しかしバイク事故で足を粉砕骨折したり、親しい友人を亡くされたりして、命のはかなさを実感し、生きる意味を少し見失います。

 就職活動で出会ったのは、前向きな姿勢で社員を引っ張る人望の厚い経営者の会社。少しでも後ろ向きな言葉を出すと、「常に前向きに夢や目標を持って前に進もう!一緒に頑張ろう!」と力強く語ってくれる直属の上司。自分なりの顧客サービスの信念、より働きやすい社内システムの構築などの業務に没頭して、25歳で主任に昇格します。
 ところが新しい上司は、会社の方針強化をうまく組織に浸透させて実績を次々と上げて行く。「自分の居場所はもうないのか…」と自信を失って、「後ろ向きな気持ち」をひとりで抱えて悶々とする日々を1年も送ります。なかなか会社の中ではこんな気持ちを吐露できない…。

 「思ったとおりに動けばいい。会社を辞めてもいい」。いつでも自分に信頼を寄せてくれて、後ろ向きな思いでも素直に打ち明けられる奥さんの言葉。1年後に意を決して退職覚悟で会社の新規事業に自ら手を上げると、東さんの力を評価していた会社はその希望を叶えてくれました。いまはまた、社内に誰も答をもっていない新しい事業戦略の推進役として、前向きに嬉々として仕事に打ち込む日々が続いているそうです。

 一瞬たりとも後ろ向きな気持ちにならない人なんて、この世の中に多分いません。 特に疲れてしまっているときなどを中心に、多くの人がポジティブになり切れないからこそ、「プラス思考のススメ」という類の本や雑誌があんなに店頭に並んでいるのです。
 マイナス思考をしてしまう自分自身を決して嫌うことなく、すべてを受け入れてしまっていのではなでしょうか? それこそが本当の自分らしさ。マイナス思考でいつも緊張感を持って慎重に仕事をするからこそ、大きなリスクを回避できていたり、「あの人は信用できる」と思われているかもしれません。周りの人はそんなあなた全体を受け入れて仲間として受け入れてくれているのです。
 どうしても前向きになれないときは、なーんにもせずにただ休んでしまいましょう。しばらく休んでいると、人間は必ず前向きに動きたくなってくるものですから。


 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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