編集長コラム 
vol.56: 「くじけそうな気持ち」を支えてくれるもの(4) 2004年6月22日(火)

 夜遅くに帰宅して、まだ幼い子どもの安らかな寝顔を見ると、「まだまだ頑張らねば!」と気合が入る…。そんな話をよく耳にされると思いますが、現在41歳の私も全くその気持ちでこの数ヶ月を過ごしました。

 私事極まりなくて申し訳ないのですが、私は家庭を支えることを放棄した父親のもとで、少ない母の稼ぎの範囲の中で欲しいものもほとんど手に入れられず、自由な進路選択もできませんでした。ですから長男が生まれたときには、「私のような切なく不自由な思いだけは子どもには決してさせないよう真面目に働こう」と心に誓い、39歳までは企業人として高い収入を安定的に確保していました。
 しかしその後に私が選んだ道はこのNPOによる起業。それもほとんどすべての方から「余りにも収益が見えないのでやめておけ!」と反対されるほど見通しも立たず、「勘と度胸と経験」だけでの無謀な船出。妻には「2年でメドが立たなければあきらめるから」とだけしか言わず、日々の生活や将来への不安を払拭してもらおうという努力もしませんでした。

 
そしてこの6月末こそがその2年の期限のリミット。多くの読者のみなさまや協賛法人・営利事業の顧客企業さまのおかげで、昨年11月から少しは給料をとれるようになり、いますぐ事業撤退することは避けられそうなのですが、いまだ個人の収入は独立前の1/4程度。3号の売れ行きおよび3号発行後の数ヶ月の事業戦略次第で、自分の進退を決断しなければならないというプレッシャーが、雑誌づくりの段階からのしかかっていました。
 まだ中学1年の長男と小学4年の次男。この2年は、決して不自由はさせてはいませんが旅行などのお金のかかる行楽や外食にも行けず、土日もほとんど仕事で遊んでもやれず、子ども心にも「贅沢はできないんだ」と思っている様子が痛いほどわかる。
 そしてそのまだまだ精神的に不安定な子どもたちの日々の面倒をすべて引き受けてくれている妻には、学校や近隣の方々とのお付き合いや地域活動もほとんど任せっ切りで、さらに事務所の経理や書店さまとのリレーション作りなどの業務までお願いしていて、さまざまなストレスや疲れが溜まっているはず。
 しかしそんな素振りも見せず、生活不安を口に出すこともなくいつも明るく振舞ってくれる妻、その妻が日々接して明るくのびのびと成長してくれている子どもたちが友人関係などのさまざまな出来事に遭遇してもくじけず頑張っている様子こそが、「自分のわがままをゆるしてくれるこの家族に決して不自由をさせるわけには行かない」「あと一息、あとひと踏ん張り」と、くじけそうな気持ちを何度も吹き飛ばしてくれました。

 家族を持つことはとても大きな責任を背負うことに間違いありません。ときにそのプレッシャーに押しつぶされてすべてを投げ出してしまいたくもなりますが、逆にそんな支えやヤリガイがあるからこそ逃げ出してしまっているような困難にも、粘り腰でことに当たれる力を与えてくれることも確かなのです。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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