編集長コラム 
vol.57: 「くじけそうな気持ち」を支えてくれるもの(最終) 2004年6月29日(火)

 管理職や経営者になると予想にもしなかったことが次々と起こることが常であって、自分で自分の時間をコントロールしにくくなります。ところが普段ゆっくりと考える時間がなくて苛立っていながらも、激務のなかでときおりポッカリと一人で過ごせる時間ができたとき、「あー、俺はいったいなにをやってるんだろう? 本当に今やっていることが本来やろうとしていたことなのだろうか?」と思ってしまうのは私だけでしょうか?
 特にいろいろな決断や納期が重なっているときはなおさら、目の前の業務をこなすことに神経がすり減って行って、本来の目標や目的を見失ってしまうことも多くありませんか?

 この3号づくりでは、創刊号および2号で一定以上の手応えを得て少し気持ちの余裕ができたのでしょうか、目の前の業務に忙殺されながらもときに突然に一人で考えたりする時間ができたりして、逆にとても苦しい思いをしました。

 「3号もこれまで並みの売れ行きや反響があるだろう。しかし一体どれくらいやろうとしていたことに近づいているのだろう?」「企業は史上最高益を出していて多くの人はボーナスもたくさん出るらしい。同世代の経営者も事業をうまく軌道に乗せて高収入を実現している。いまだ生活を維持する収入も手に入れられない俺の決断は本当に正しかったのだろうか?」「この3号で何か将来への展望が開けること起きるだろうか? このままではただの自己満足に過ぎないのではないか? いまならまだ転身できる」…。さまざま不安や自分への自信のなさが、時間ができたときにこそ猛烈に押し寄せてくるのです。

 そんな気持ちに押しつぶされそうになる自分をなんとか立て直すために、ひとつのファイルをかばんに入れて、メンバーたちに「移動オフィスに行ってくる」と言って何度も電車に飛び乗りました。そこには2年前に16年勤めた会社から独立して起業することを決意したときにその想いや覚悟を書き記したシートや、この事業を始めるにあたって作成した企画趣意書が入っているのです。電車に揺られながらそれらの資料の一文一文にゆっくり目を通して、それを書いた当時のことを思い起こしていきました。
 なぜ企業勤めを辞めようと思ったのか? どんな経験からこのサービスを提供したいという強い情熱が生まれたのか? 何を得るために何を失う覚悟をしたのか? 懸命な慰留や猛烈な反対をしてくださった方々や逆に強く背中を押してくださった方々の言葉…。いろんなことが思い出されてきて、この事業を始めたときの決意がよみがえってきました。

 もしかしたら間違っていたかも知れない。私が考えたことなんて世の中から必要とされていないのかも知れない。それでもこれを決断した「自分自身へのプライド」にかけて、決していま逃げ出してたまるか! と、なんとかくじけそうな気持ちを少しずつでも遠くに追いやることができたのです。

 自分をもっとも応援できるのは自分自身。さまざまな方々からの支えに感謝しながらも、最後にそれを生かせるかどうかは、「自分を本当に信頼できるかどうか」にかかっているように思うのです。自分で自分を応援する。そんなことを提案してこのシリーズを終わりたいと思います。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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