編集長コラム 
vol.58: ときには肩の力を抜いて 2004年7月6日(火)

 何かに夢中になれる幸せというものがあります。しかしときには肩の力を抜いて、「なぜいまそのことに夢中になっているのか」ということ、をいろいろな人との会話の中で考えることも重要です。そんなことを気づかされたのが、元コナミスポーツ株式会社の中野小百合さん(30歳)への取材でした。http://www.kyoto30.com/30nakano_f.html

 中野さんは両親から優等生であることを期待されてそれになんとか応えようとする幼少期を過ごします。家庭以外でもスイミングスクールのコーチから熱心な個別指導を受けると、「将来はオリンピックに出たい」と思うほどまで練習に明け暮れます。ところがそのコーチが転勤してしまうと9年間も続けた水泳をいとも簡単に辞めてしまうのです。高校での陸上もコーチの熱心な指導に、体を壊してまでも活動を続けます。

 「やらせる」のではなく「やりたくなる」ように指導をするスポーツプログラマーという職業を見つけ出し、父の反対を押し切ってまでその専門学校に進んで念願のフィットネスクラブ経営の会社に就職します。1年間は上司の厳しい指導に、体の疲れも忘れてインストラクターとして頑張りますが、自ら望んで配属してもらった勤務先には高い目標に向けて突き進む同僚もいなければ、そんなことを求める上司もいませんでした。趣味でテニスやゴルフ、水商売のアルバイトなどをしてみても没頭できない。「何に夢中になっていいのか」がわからない悶々とした4年間を過ごしてその会社を退職します。
 他の仕事についても没頭できずに、再びインストラクターとして働き始め、上司から売上目標を強く課せられると頑張れて、要望の低い上司に代わった途端に目的を見失ってさまよってしまう…。同じことの繰り返し。

 実は、水泳や陸上、そして仕事としてのインストラクターは、「その競技や仕事内容そのものが好きだ」という気持ちよりも、「しっかりと励まし見守ってくれる人の期待に応えたい」という気持ちこそが、中野さんを夢中にさせていたのです。そのことに気づかせてくれたのは、「もっと周りを見てごらん」とアドバイスし続けてくれたご主人だったそうです。
 ですから結婚後は、ご主人という「見守ってくれる人」がいてくれている安心感からか、ひとつのことに没頭しすぎず、仕事も自分ができることを自分で決めて、マイペースで取り組めるようになったそうです。

 何か夢中になれるものがあれば、特に20代なんかは徹底的にそれに没頭すればいいと思います。しかし「夢中」とは「夢」の「中」と書くくらいですから、自分の置かれている現実や現状を見失ってしまうことも多いのです。そして最も怖いのがその夢に挫折してしまったときに、自分のすべてが失われてしまったような錯覚に陥ることです。
 ですから、ときは肩の力を抜いて、「なぜ私はこんなにもこのことに夢中になっているのだろう?」と素朴に考える機会、とくにいろんな人の声に耳を傾ける機会を持ってみませんか? そうしておけば決して夢破れても、あわてることもないでしょうから。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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