編集長コラム 
vol.59: みんな失敗する。だからこそ思い切って。 2004年7月13日(火)

 人生の決断に失敗しない人なんているのでしょうか? もちろん思い切った決断で短期的に見て驚くべき成功をしている人はいる。ところがその成功が何かを狂わすのか、たとえば会社内で猛スピードで出世して管理職になったとたんに魅力を失ってしまう人や、財や人気を築いた人がそれを帳消しにしてしまう失態を演じてしまう人などはここそこで見聞きする。実はずーっと成功し続けている人を見つけ出すことこそがとても難しい。つまりほとんどの人が必ずどこかで失敗しているのです。だったら思い切って決断して仮に失敗してもそこからシッカリ何かを掴み取ることこそ20〜30代前半には大切なのかも知れません。そんな感想を持ったのがシーシーエス株式会社武市真吾さん(29歳)の物語でした。
http://www.kyoto30.com/30takeichi_f.html

 武市さんは、祖父が創業した染物工場の跡取りとしての期待を祖母から強くかけられ、周囲の期待に応えることこそ自分の役目と思い込み、いつも「人から見られている」という感覚で引っ込み思案の性格でした。高校に進学してから少しずつ「優等生」ではない行動にも興味を持ち、自分の意思で選んだ生物学を学べる大学に狙いを絞って受験をして合格。しかし一人住まいの大学生活を満喫する中で、スキー部の練習で頭蓋骨を開く手術をするほどの大きな怪我をして「生きること」に対する深い不安と思いを持ち始めます。そしてある健康器具メーカーの経営者の熱い人生論に酔いしれ、有名企業への就職を望んだ親の期待を振り払ってまでその会社を選びます。
 
 
ところが社長秘書として経営者からの期待に応えようと夢中に業務に没頭し、株式上場の準備を任せられてたった一人で奔走しながらも、少しずつ社長の裏表のある言動に疑問を感じ始めます。意を決して直談判に望んでもはぐらかされ、「こんな会社が上場しても社会のためにならない」と転職を決意します。
 不安を持ちながらの転職活動でも会社を見る観点は明確でした。人の話をしっかり受け止めてくれる経営者やそこで働く社員さんたちの透明さ。シーシーエスはそんな武市さんの目に適う会社で、入社後も社員一人ひとりがしっかり意見を持って仕事に自主的に取り組んでいる姿を目の当たりにします。「ここでなら自分らしく頑張れそうだ」と確信して、前の会社のときからいつも温かく見守り励ましてくれた女性と、親の猛反対を押し切ってまで結婚されるのです。
 今は子どものころから大好きだった機械と大学で学んだ生物学の知識を生かした新しい分野の製品のマーケティングを担当するセクションに配属され、決してあせらず自分らしい働き方をして大怪我の後遺症まで薄くなってきたそうです。

 親を初めとする周囲の期待に反して自分で決断した就職での失敗は、ご本人にとってはとても大きな挫折だったでしょう。しかし武市さんはそのことを後悔するよりも、しっかりと目の前の業務で知識を蓄え、あせらず間違いのない就職先を選ぶ視点を養われました。そして転職後もコツコツと新しい経営者や上司、仲間の信頼を築いて行かれたのだと思います。

 20〜30代前半はまだまだ社会経験が浅く、「失敗をすることが当たり前なのだ」という前提を持っても良いのではないでしょうか。特に「失敗だけはしたくない」と言う思いが強すぎてなかなか「半歩」を踏み出せないでいる方には、後で大笑いできるくらいの失敗を目指して欲しいと思います。自分で選んだことをシッカリ自覚して必死に取り組めば、たとえ失敗したとしても後悔以上の何かが必ず残ります。そしてその失敗をいくらでも挽回できる時間を持っていることこそが20〜30代前半の特権なのですから。



 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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