編集長コラム 
vol.65:自分の「役割」は自分で探す 2004年8月31日(火)

 景気回復が言われる中で、企業からの求人の増加を見込んで自発的な離職が増えているそうです。とくに若い世代の離職が多いのは、「いまの仕事や会社ではどう頑張っても力を発揮できない」「自分の将来をまだまだ決めてしまいたくない」という感覚が強いからなのでしょう。 しかし転職という「一歩」を踏み出す前に、本当に今の仕事の中に自分のヤリガイを見出すことはできないのかを、ぜひ再考して欲しいと思います。
 京都楓雅舎の造園職人・小笠原哲さん(29歳)の取材では、自分の仕事の視野を広げてみることが、新しいヤリガイや自分の役割を見つけることにつながることを実感しました。
http://www.kyoto30.com/30ogasawara_f.html

 小笠原さんは、大勢の友達と野山を駆け回り、サッカーやラグビーに夢中になる屈託のない少年時代を送りました。小さいころから図工が大好きで、机の上には外で拾ってきた小石や瓦の破片が宝物のように飾ってあったそうです。
 中学の先生が付きっ切りで指導をしてくれてスポーツ推薦で高校に進学して、卒業後にはバイト先の美容室にそのまま請われて就職します。

 20歳近くになって造園の世界に興味を持って、親方になんども頭を下げて雇い入れてもらい、過酷な職人修行を始めます。
 用事がない限りは土日も休みはなく、60kgにも及ぶ石や木を運び、3mの木から転落したり、虫に刺されて全身の皮膚が変色してしまうような苦難をこらえる日々。それでも親方から指示された作業の意味を、自分でシッカリ考えながら夢中になって取り組んでいると次第に腕もあがり、自分の頑張りで会社も充実していく実感をかみ締めていました。

 しかし5〜6年も経つと、父親や兄たちが大企業で大勢の人たちの力を集めて大きな仕事をする姿への羨望、限られた人としか出会えない悩みが出てきたそうです。そんなときに親方から薦められて通い始めた「訓練校」で、多くの若い職人たちと出会うのです。
 彼ら彼女らは、指示された作業を機械的にこなすだけで、手取り足取り技術を教えてもらえないことに不満を持っていました。高校進学からこの訓練校での新しい出会いまで、多くの人から導かれていまの自分がある。自分の役割は、職人の道に足を踏み入れた若い人たちを、今度は導いて行くことではないのか? そんな強い意識が芽生えたそうです。
 現在は、多くの若手職人さんたちと、いま自分が学んでいる伝統技術を一人ひとりのブランド化する団体を作り、日々の職人仕事との両立で多忙な日々を送られています。

 自分の仕事の視野を広げてみること、それには会社の外の人との真剣な交流こそが最も近道です。転職という「一歩」ではなく、まずはこんな「半歩」を踏み出すことをお勧めします。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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