編集長コラム 
vol.66:期限を決めると「大切にしていること」が見えてくる 2004年9月14日(火)

 ひとつの職場に永く勤めていたり、同じ仕事を長く続けていると、次第に新鮮さが失われてきて、自分がどんなことを「大切にしたいのか」が見えなくなってきます。ところがその「期限」が明確になると、その限られた期間を少しでも有意義に過ごしたい意識が生まれて、大切にしたいことの優先順位が見えてきます。そんな実感を得たのが三共製版株式会社の清水昇臣さんの取材でした。
http://www.kyoto30.com/30shimizu_f.html

 清水さんは、高校の美術科を経て写真の専門学校を卒業。新卒で大阪の小さな出版社に入社したものの、そこで任されたのは新規開拓の営業職。結果を出せずに8ヶ月で退職して京都の実家に戻り、求人誌で見つけたのがカメラの知識を活かせるいまの職場でした。
 同じ素材でも人によって仕上がりが変わる職人技の世界。「技術は自分で盗め」という先輩は教えを請えば熱心に教えてくれて、毎日のように深夜まで続く仕事も苦にならない。
 しかし、少しずつ技術が向上していく手応えを感じていた4年目に、後輩指導を任されるようになって使命感に燃えるのですが、なかなかうまく説明してやれない。熱意も感じず、すぐに音をあげてしまう後輩への指導は、次第に面倒臭くなってきたそうなのです。
 いつしか「会社の仲間は自分で選んだ仲間じゃない」と心を閉ざし、休日の社外友人たちとの交流を楽しみに、平日を与えられた業務だけをこなす日々を5年間も過ごします。

 30歳を過ぎたころに経営者が代替わりして、急速に製版技術のコンピュータ化が進められ、自分の存在価値に不安を覚えて、少しずつ自分の進路を考え始めたそうです。そして以前からハマっていた中国茶専門の喫茶店の経営をしたい気持ちが高まってきて会社に相談をすると、経営陣は「やりたいことを大切にしろ」と応援してくれる。
 1年後に独立する決意を固めたとき、「このままで辞めてしまっても良いのか?」という気持ちが芽生えたのだそうです。「先輩たちから受け継いできた技術を、何も後輩たちに伝えて来ていないじゃないか!」と。
 自ら後輩たちを食事やスキーに誘い出して心を開いていくと、次第に熱心に仕事の質問を投げかけられるようになってくる。「俺もイザというときに頼りにされる男になりたい」という、憧れていた生き方が鮮明に蘇ってきたのだそうです。今は開業準備と最後の後輩育成に多忙な日々を送られていらっしゃいます。

 会社の大きな戦略変化が自分の「期限」を決める大きなキッカケになるケースはよくあります。できるならば20代のうちから自ら2〜3年の期限を設定して、その間に実現したいことを明確にしておくことが重要でしょう。その繰り返しこそが、最終的に実現したい「大切なこと」に少しずつ近づいていく最も近道なのかもしれません。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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