編集長コラム 
vol.68:その時々の「純粋な想い」に夢中になる 2004年10月12日(火)

 メディアから膨大な情報が流れてくる社会になって、自分の進路や生き方・働き方についても、いったいどれを選択すればいいのか、誰の言葉を信じればいいのか、という迷いも増えてきます。しかしそこで迷路に入り込んで考え込むよりは、その時々に「純粋に感じた想い」に素直になって夢中に取り組んでみることがとても重要だということを、株式会社フクナガ・ティ アンド フーズの土井哲三さん(29歳)の取材で実感しました。
http://www.kyoto30.com/30doi_f.html

 
土井さんは幼少期のころは大勢の仲間を引っ張るガキ大将。中学に入って人の先頭に立つことは減りますが、会社勤めから自営業で独立してコツコツ楽しそうに働く父親を見たり、バイトで小さな焼肉店を自分らしく切り盛りするオーナーに憧れて、「将来は自分で店を開きたい」と、数十店舗の外食店を展開するフクナガ・ティアンドフーズに入社します。

 最初の店では、それぞれの従業員の性格を理解して指導してくれ、いつも夢を語ってくれる外部から来た店長に「目指すべき姿」を見つけて夢中に働きますが、その店長は不祥事を起して退職。次の店では、過酷な仕事を従業員に押し付けるだけの転職組の店長に代わって「自分がみんなの気持ちを汲んであげなければ」と、将来を語ってアルバイトたちを励まし、自らの時間を割いて懸命に働きますが、今度は不注意から起した自分のミスで本社のお膝元の店に配置換えされてしまいます。

 「精神的な甘さを克服しろ」とひとつの店を任され、売上管理やメニュー戦略などの初めての業務ばかりの店長職に途方に暮れても、「まだまだ期待されているんだ」という思いで仕事を一人で抱え込んでいく。いつしかメンバーからは不信の目で見られ、売上は下降線をたどる一方。そして連日の深夜残業に、奥さんとの意見衝突も増えて何度も離婚話が浮上。ついに店長を降格されて生え抜き店長が仕切る店舗に研修配属されます。

 その店長は朝一番に出社して、細かく厳しい指示をして夕方6時には店を離れて、後をメンバーに任せてしまう。その厳しさに反骨心を刺激されて、無我夢中で食らいついていくとさらに店長からの要求は高まり、業務は高度になって行く。いつの間にか周りのメンバーにわからないことを素直に尋ねて、仕事を任せて行くようになっていたそうです。
 そんなとき、店長から「家族との時間をとってやれよ」という言葉を掛けられて、「大切にしたい働き方」に気づいたそうなのです。今は社内最大規模店の店長として、大勢の従業員の、一人ひとりの成長に向けた熱心な指導を続ける一方で、夜7時には帰宅して2人の子どもの面倒を始めとした家事でも奥さまを助けていらっしゃるそうです。

 熟慮を重ねて「理想の働き方」を追い求めた訳ではないのに、「大切にしたい働き方」にたどり着いている。それは、どんな状況でも、その時々の純粋な想いに素直になって業務に集中して、そこからスキルや気づきが蓄積されているから。情報過多の時代に、自分の進路を切り開いていく、もっとも大切なスタンスかも知れません。

 

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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