編集長コラム 
vol.73:回り道を恐れない 2005年04月05日(火)

 人事異動の季節です。中には希望もしない部署や職種への異動辞令が出て、不本意な想いをしている方もいらっしゃるかも知れません。「やりたいこと」や「進みたい方向性」に向けてまっすぐ進めない仕事でも、その中で、決してあせらずどう過ごすのかによって、結局はゴールに少しずつ近づいていくことを学べたのが、株式会社おたべの石田房幸さん(32歳)の物語です。http://www.kyoto30.com/30ishida_f.html

 石田さんは、仕事で軽い障害を負いながらコツコツと働く父親と、パートで家計をささえる母親の愛情豊かな家庭で育ち、お絵かきやものづくりを楽しむ少年時代を過ごします。中学から陸上で長距離種目に没頭して、華やかな成績はなくても大学卒業までひとり黙々と走り続けました。大学での専攻は化学ですが、就職活動ではものづくりがしたくて、京都の有力和菓子メーカーおたべに最終面接で「商品企画がしたい」と伝えて入社をします。

 しかし、入社と同時に就いた職場は製造ライン。1年後には直営店の店長をして、翌年には配送部署へ…。商品企画の仕事には一向に向かっていかずに「これも経験だ」と自分に言い聞かせますが、27歳には顧客向け販促ホームページ担当、次の年からは営業で走り回って、ようやく30歳のとき初めて異動願いを出すと、すぐに商品開発担当になりました。

 しかし、次々と生まれるはずの商品企画は一向に浮かばない。ひとり悶々と考えて、社長から温かなアドバイスをもらってもなかなか視野は広がらない。試作品は思ったものがあがらず、良いものができても原価面が商品として成立しない。「辞めたらどうなるんやろう…」とまで思った2年間が過ぎて、別プロジェクトとして、社内の各部署からメンバーが集められた商品企画会議で、参加者の何気ない一言からヒット商品が生まれる様子を見てコツを掴み、ようやく2つの商品化を成功させたときに担当を外されたそうです。

 しかし、いまはネット通販の店長を任されてコツコツと実績を積み上げる一方で、再び直営店の店長職を狙っているそうです。一度目の挑戦では、入社以来の製造や店舗、配送、営業のせっかくの現場経験を生かせませんでした。しかし、その知識を冷静に蘇らせて、あとは店舗で顧客の声さえタイムリーに掴めれば、次こそは成功できると確信しているからです。陸上で鍛えた持ち前の粘り腰で、たとえ回り道をしても、向かいたい方向さえシッカリ見据えていれば、そこから得るものが一杯あることをすでに知っています。
 両親と同じように温かな家庭作りに励みながら、リベンジの機会を伺っているのです。そして、経営者としてもそんな姿勢で頑張る人にこそ、チャンスを与えるものなのです。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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