編集長コラム 
vol.78:狭い視野の中で進む方向を決めつけるな 2005年06月28日(火)

  私は現在42歳。ときおり、「体力も落ちてきて、先も見えてきたなあ…」と弱気になることもありますが、50歳になっても60歳になっても新しいことに挑戦し続ける諸先輩のお話をお聞きするたびに、「俺なんてまだまだ若造だ!」と痛感することが多いのも事実です。

 まして30歳前後の読者のみなさんには未来は無限に広がっている。挫折も経験したでしょうし、あせりを感じることもあるでしょう。しかし、決して狭い視野で自分の将来を決めつけてはいけないなあと思ったのが、株式会社S.R.M.の鶴田裕幸さんの取材でした。
http://www.kyoto30.com/30tsuruta_f.html

 鶴田さんは、同族会社の専務を勤める、おしゃれで金払いや人の面倒見がよくて、人生を楽しんでいるように見える父親に憧れ、大学卒業後は独立・起業をしようと、組織運営を学ぶために生命保険会社に入社します。内定式で社長が「生涯賃金は3億円」と話すのを聞いて、「なんだ、それだけしかもらえないのか」と思ったそうです。

 入社2年間は、売上がダイレクトに給与に反映される個人営業で優秀な成績を収めて、3年目からが外交員を指導して、その頑張りで実績をあげていく仕事につきます。ところが、「人を見れば金と思え」「売れない外交員は辞めさせろ」という会社に幻滅すると同時に、自分の無力さを痛感して、独立を前提に4年目になって退職します。

 自分の進むべき道を見つけるために、20人以上の人に話を聞きに行く中で、決まった商品を売り込むのではなく、顧客にあったプランをコンサルティングしながら営業する「憧れの働き方」ができる保険代理店であるS.R.M.の求人に出会って入社します。28歳でした。

 しかし、「顧客の利益が最優先」を頑なに貫く経営者のもとで、決まった商品を売り込むスキルしかなかった鶴田さんには、見込み顧客は本音やプライバシーを話してはくれません。自分が決めた売上目標さえ達成できず、一人で思い詰めて孤独になっていく2年間。

 ところが、仕入先の生保会社の担当に相談すると、いつでも時間を割いてくれて励ましてくれる。社長は何時間でも黙って話を聞いてくれて理論的な指導をしてくれる。そして、「なぜこの人たちは、こんなに人のために懸命になれるんだ?」と思い、自分の進むべき道を見つけたように思ったそうです。「俺もこんな、人のために役立てる人間になりたい…」。

 もしかすると鶴田さんは、父親が人から頼りにされる姿の表面的なかっこよさに憧れて、高収入や独立を夢見ていたのかもしれません。しかし、目の前のことに夢中に取り組み、自分の進む道を広い視野から見るために数多くの人の話を聞いて、いまの会社や新しい人に出会って本当に自分の進みたい道に気づきました。33歳だった鶴田さんは、「未来に期待感が一杯。もっといろんな人と出会い、いろんなことを学びたい」とおっしゃられました。30歳なんてまだ若造。決して自分の道を狭い視野の中で決め付けてはいけないのです。

 100人に100通りの「働き方」。バブル崩壊後に社会に出た今の30歳は、自分で自分の「働き方」を決める「新しい時代のトップランナー」です。そしてどんな「働き方」を決断しようとも、最終的に決して後悔をすることのない唯一の観点があります。
 「あなたが頑張って働くことは、自分以外の誰のためですか?」
 家族のため、職場の仲間のため、自分を信頼してくれる人のため、お客様のため、地域のため、社会のため…。迷い少なく働いている30歳は、みんなこの観点が明確です。
 このコラムでは、取材などで出会った方々から学んだこと、気づいたことを、そんな観点から説明していきたいと思います。

★編集長:宮崎 健(ミヤザキ タケシ)

 NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド(WOOCA)代表
1962年生まれ。株式会社リクルートに16年間勤務。数百社の採用・研修・CI・広報・イベント企画と、メディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年6月独立し、現在に至る。
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編集長へのメールはmiyazaki@kyoto30.comまで。
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